コラム No.005 落ちつけバルク、泣くな五十嵐 -人生の折り合いについて-
![]() | もう30年も前になるか。全国中の地方競馬ファンが祈るように京都の淀3000メートルを注視したことがあった。 その年、笠松競馬に後に「怪物」と呼ばれた一頭のサラブレッドが現れた。ハイセイコーである。 彼は中央のクラシックロードに乗り、三冠確実といわれた。ところが皐月賞を勝ったもののダービーは3着、淀の菊花賞に雪辱の駒を進めたのである。 全国中の地方競馬ファンといったが、その頃はもうすべての弱き者、名も無き者、下積みの者、ひねくれ者、負け犬達のアイドルになっていた。 そう、近年のオグリキャップからハルウララに至る系譜である。 騎手はベテラン増沢末夫であったが、やはり抑えきれず長丁場を向う正面先頭に立ってしまった。3、4コーナーは下り坂である。 杉本清アナは「抑えて登り、抑えて下らなければなりません!」といった。調子に乗って下ると直線パタリと足が鈍るからである。 淀の競馬場は菊花賞の時間、夕陽が真直ぐ背中に当たる。だから各馬はゴールまで自分の影を追うように追い込んでくる。
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私はいつもこの馬の影を未だ咲かぬ地上一尺の夢と思うことにしていた。
3ハロン(600メートル)を切り、ダービー馬タケホープが追い込んできた。ハイセイコーは必死に逃げたが、悲鳴の中ハナ差差切られまた負けた。
勝っても勝っても人気がなかったタケホープの嶋田功は「僕の馬が一番強いんだ」と泣きじゃくった。
事実彼のようにダービー~菊花賞~春の天皇賞を連勝する馬が一番強い。
さてコスモバルクである。彼は北海道競馬出身である。そして騎手も北海道の五十嵐冬樹。
私は久しぶりにハイセイコーの興奮を思い返し、バルクの菊花賞に見入った。
しかしスタートしてすぐ彼の勝ちを諦めてしまった。口を割ってかかるように先頭に立ってしまったからである。
コスモバルクは人馬共自分をコントロール出来ないのだ。人馬共気負う自分を冷静にみるモニター力が育っていないのだ。
無理もない。馬運車での長距離輸送、仮の厩舎、中央競馬GIレースのプレッシャー...
バルクも五十嵐もよくやったと言ってやりたい。だが未だそれは言いたくない。
闘志と馬体は並外れてるからだ。あとは自己制御さえ出来れば...と思うからだ。
11月28日ジャパンカップに五十嵐冬樹は降ろされ、バルクには来日中のルメール騎手が乗るという。馬主の意向という。
落ちつけバルク、泣くな五十嵐!
ここが試練、夢の有馬記念こそ二人の勝負だ。
今、就職活動に走り回っているわが学生達。人生という長丁場とどのように折り合うのか。
案外馬が教えてくれるかも。
2004/10
2008年01月08日 連載コラム [clm]


